#4
冒険者よ。 よくぞこれまで足掻き続けたな。 貴殿らの知る通り、この長大なる物語は終局に近づいている。
迷宮塔・バベルとは何か。アスリートとは何なのか。 その由来についても語っておこう。
本来、問わず語りも介入も、我が信条に反する。はずだったがな。
だが無限の螺旋を登り詰めた貴殿らにはこのくらいは敬を示さねばならぬ。
それに、ベラムがここまで追い詰められるのも久方ぶりだ。
些少な肩入れも許されよう。興が乗ったと捉えてくれ。
古来より、神と悪魔は、あらゆる地でその覇を競い合った。
ミノスの迷宮で。ピラミッドの地下で。そして……バベルの塔で。
塔が斯様な形で立ち現れるのは久々だった。この地の混沌がそうさせたのかもしれぬ。
神と悪魔は直接やり合うことはせぬ。その駒は貴殿ら人間だ。
悪魔が人を誘惑し、神の差配がその在り方を質す。 終わりなどない、此世の意義を問う相克だ。
──そんな最中にあって、ひときわその存在を輝かせる者がいた。
絆を紡ぎ、魂を鍛え、悪魔を打ち倒す。人間の極致。
彼らのもとで一挙に攻勢に出た人間は、その絆で悪魔を退け、束の間の平和を築いた。
彼らは"αθλητής"──アスリートと呼ばれた。 その魂の輝きは、胸に黄金を纏う証として表出する。
アスリートの神事は、あらゆる戦を退ける祝祭として現在も形を残しているな。
戦の化身・ベラムにとって、アスリートは最大の敵だ。
数ある人間の陥れる誘惑の中でも、最も魔性を帯びるのは血に塗れた闘争──戦争である。
それゆえ、戦を司る彼奴は悪魔の王として君臨しているのだ。
その根源たる力が、アスリートの紡ぐ絆などという人の業に、易々と打ち砕かれることは許されぬ。
かくしてベラムはメフィストを欺き、アスリートの魂のみを蒐集するという悪趣味な策に打って出た。
だがその目論見も、もうすぐ終わる。 肩入れしたことに矛盾するようだが、
究極、貴殿ら人間が戦の悪魔の誘惑に呑まれようが、 絆を手に入れようが我にとっては等しく"良し"なのだ。
人間に善も悪もない。 故に本来的には、此世に神の勝利も、悪魔の勝利も存在しない。
我がいくらベラムの傀儡の数をちょろまかそうが、その事実は揺るがない。
それでも歩み、魂を高め続けること。在り方を探し続けること。
それこそが、我が弱き人間に求める姿。存在を、魂を輝かせるということではないかな。
さて、我が双眸で、この螺旋の終わりをしかと見届けよう。 我は観測者。観測する、神。 ……っはぁー。
まあそんな感じだ。お堅い喋り方は疲れるな。 さあさあ、Heaven or Hell!
果たしてどちらが勝つかな?HAHAHA!